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生細胞の中で水はどのように分布しているのか:核の方が細胞質よりも水の密度が高い(疎である)ことを実験的に示しました.

  • 孝和 中林
  • 2018年3月27日
  • 読了時間: 2分

細胞の中は分子クラウディングと呼ばれる生体分子で非常に混み合った状態であり,この分子クラウディング状態は,細胞内の生体分子の構造と機能に大きく影響を与えることが知られています.細胞内分子の構造と機能に対する分子クラウディングの影響については、In cell NMR法などにより、多くの知見が蓄積され始めています.しかし分子クラウディング自身については,実はほとんど理解されていません.実は分子クラウディングを反映する物理量がないために,細胞内環境を「分子クラウディング」という言葉のみで表し,十分な議論が行われていませんでした.そこで我々は,「細胞内の水の密度」が分子クラウディングを反映する物理量になることを提案しました.細胞内の水の密度が高い(低い)場合,溶質の濃度が低い(高い)ことになり,分子クラウディングの効果が小さい(大きい)ことになります.実験では,ラマンバンドの強度を画像化するラマンイメージングを用いて,細胞内の水のO-H伸縮振動のラマンバンドのイメージングを行い,細胞内の水の空間分布をその場で得ることに成功しました.さらに,O-H伸縮振動バンドの強度から,核の方が細胞質よりも水の密度が高く(生体分子の密度が小さく),分子クラウディングの効果が小さいことを初めて示した.実は,細胞内で核と細胞質のどちらが水の密度が高い(すかすか)なのか分かっていませんでした.本研究は,分子クラウディングの評価法だけではなく,細胞の非常に基本的な性質を明らかにした研究になります.薬剤の導入や様々な生理現象に伴う細胞内の水の密度・水素結合の変化や細胞内外での水分子の移動など,「細胞内の水」という新たなパラメータを用いて,細胞センシングや生理現象を理解できるのではないかと考えています.

Experimental Evaluation of Density of Water in a Cell by Raman Microscopy.

The Journal of Physical Chemistry Letters, 8, 5241-5245 (2017).

M. Takeuchi, S. Kajimoto, T. Nakabayashi, doi: 10.1021/acs.jpclett.7b02154

 
 
 

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