Rasタンパク質のクラスター生成機構:相互作用を行うガレクチンのクラスター化によって生成することを提案
Rasタンパク質内にあるファルネシル基のモデル化合物を用いて、レクチンであるガレクチン-1 (hGal-1)とRasタンパク質との相互作用について検討しました。PAGE、自家蛍光寿命測定などから、hGal-1はファルネシル基と結合することにより、速やかに自己会合(クラスター化)を生じることを示しました。RasはhGal-1との相互作用によってRasクラスターを形成し、細胞増殖などの細胞内の情報伝達を行うことが知られています。本研究から、Rasがファルネシル基を用いてhGal-1と相互作用を行い、相互作用に伴うhGal-1のクラスター化によって、Rasクラスターが生成するというモデルを提案しました。 Generation of Self-Clusters of Galectin-1 in the Farnesyl-Bound Form. Scientific Reports, 6, 32999 (9pages) (2016). K. Yamaguchi, Y. Niwa, T. Nakabayashi, H. Hiramatsu doi: 10.1
ナノ秒パルス電場(nsPEF)を用いた細胞制御:NADHの自家蛍光寿命から細胞内環境変化の計測に成功
ナノ秒パルス電場(nsPEF)を細胞に印加することによって、細胞膜を傷つけることなく、細胞内の状態を変化させることができ、メカノバイオロジーの一つとして疾病の治癒などへの応用が提案されています。私達は、補酵素NADHの自家蛍光寿命イメージング(AFLIM)から細胞内の様々な環境変化について検討しており、本研究においても、nsPEFの印加による細胞内環境変化について、NADHのAFLIMから検討しました。AFLIMの長所は、ラベルフリーかつ高感度に細胞内環境変化を検出できることにあります(参考文献1)。nsPEFの印加によってアポトーシスが進行し、NADHの自家蛍光寿命の時間変化から、カスパーゼ活性によるアポトーシスがnsPEFの印加によって進行することを示しました。またパルス幅が短いほど自家蛍光寿命の変化量は大きく、短パルスでは効率的に細胞内環境変化を誘起できること、NADHの自家蛍光寿命から細胞内状態をその場検出できることを示しました。 Effects of Nanosecond Pulsed Electric Fields on the In
変性したSOD1の酸化促進性獲得:酸化触媒となる金属配位構造を示しました
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症要因となるタンパク質の一つとして、抗酸化タンパク質であるSOD1の変異体が指摘されています。私達のグループでは、ALS関連SOD1変異体は、CuとZnが欠損したapo体になることで、変性体に構造変化をすること、得られた変性体がCuと再結合することで、強い酸化作用が生じることに着目し、SOD1の変性に伴う酸化促進性獲得とALSの発症との関係について検討しています。本研究では、ALS関連変異SOD1の変性体の酸化触媒となる金属配位構造を検討し、抗酸化タンパク質であるSOD1が変性によって酸化活性を得る機構について検討しています。Cu配位部位について、配位しているヒスチジン残基の数が一つ減少するのみで、抗酸化作用から酸化作用へとドラスティックに変化することを提案しています。 The structural analysis of the pro-oxidant copper-binding site of denatured apo-H43R SOD1 and the elucidation of the origin